マンション管理の基本の一つにアメリカニュージャージー州ルトガーズ大学ジョージ・ケリング博士が提唱した「割れ窓理論(ブロークン・ウィンドウズ)」があります。
これは、建物やビルの窓ガラスが割られて、その状態をそのまま放置しておくと「外部からその建物は管理されていない」と認識され、割られる窓ガラスが増えることで建物やビル全体が荒廃し、さらに地域全体が荒れて行くという理屈です。つまり、たった一枚の割れ窓の放置から街は荒れ、無秩序状態になって荒廃が始まることで、犯罪は多発して住民は街から逃げ出し、街が崩壊するということです。
これを実践的に採用したのが、ニューヨークのR・ジュリアーニ市長です。彼は1994年(平成6年)警察官5,000人を採用し、徹底した徒歩パトロールと軽微な犯罪の取り締まりも実施し、同時にニューヨーク迷惑防止条例の積極的な運用も図りました。その結果、ニューヨークのイメージは変わり、落書きで有名だった地下鉄から落書きが消え、いつまでもきれいな乗り物として市民の足となりました。
日本でも警察が、破壊されたたった一枚の窓ガラスにも対処する姿勢で、住民に安心感を与えています。殺人や強盗などの重大犯罪だけでなく、窓ガラスを割ったり、ビルの壁に落書きをするという軽微な犯罪も見逃さず、どんどん取り締まる姿勢が大きな犯罪を抑制しています。最近では、渋谷の10万人の群衆から10人を特定して検挙した実績が次の犯罪を抑制したいい例です。
マンションの場合もルールを守らない人を放置すると同じようなことを行う人が多数現れます。例えば、1台の違法駐輪の自転車を見逃せば、10台、20台と増える可能性があるということです。しっかりルールを理解して守る人が増えるように最初の1台を発見したときに素早く対応することが大切です。
一般的にマンションには、管理組合の運営に積極的に協力する人が20%、特に問題は起こさず、決められたこと、言われてことを守って暮らしている人が60%、ルールを守らない・問題を起こす人が20%の割合で存在していると言われています。
ルールを守らない・問題を起こす人の共通点は、
①敷地内に無断駐車・駐輪をする
②決められたゴミ出しルールを守らない
③深夜まで大きな音を発生させる
④管理組合の役員を一切引き受けない
⑤管理組合の総会に一切出席せず、委任状・議決権行使書も出さない
⑥管理規約、使用細則、細則は自分には関係ないと思っていて掲示板の案内を見ない、配付物を読まない
⑦区分所有者としての義務や全体の利益は考えず、自分の権利のみ主張する
⑧相手の社会的地位によって態度を変える
⑨企業や職場の関係を管理組合の場に持ち込む
等が挙げられます。
このような人を管理するために多くの費用と時間が費やされます。この20%の人を減らせることができれば、管理にかかる費用が抑えられることが多く、特に問題は起こらず、決められたこと言われてことを守って暮らしている人達を管理組合の運営に積極的に協力する人達のグループへ少しでも多く入ってもらうように広報すれば、管理組合の運営は飛躍的に良くなります。