マンション管理委託契約は、管理組合と管理会社が契約していて、組合員個人とは契約していないという基本を理解していない一部の組合員が、理事会を飛び越えて日常管理に関して、持論を管理会社の担当者や上席に何度も架電して来て、日常業務に支障が出ているという話を耳にすることがあります。
令和5年9月に国土交通省がマンション標準管理委託契約書と同コメントを改訂して公表、カスタマーハラスメントに関して第8条と第12条第1項第四号に新設しました。
第8条では、管理事務に関する指示については、法令の定めに基づく場合(区分所有法第34号第3項に規定する集会の招集請求等想定しているようです)を除き、管理組合の管理者等または指定された役員から管理会社が指定した使用人等だけに対して行うものとしました。
つまり組合員は情報の伝達や相談を除いて、管理に関する要望等は管理者等または指定された役員に伝え、その方から行うことになります。
第12条第1項第四号の組合員等が管理会社の使用人等に対する具体的な例として、
①本契約に定めのない行為や法令、管理規約、使用細則または総会決議等に違反する行為を強要すること
②侮辱や人格を否定する発言をすること
③文書の掲示や投函、インターネットへの投稿等による誹謗中傷を行うこと
④執拗なつきまといや長時間の拘束を行うこと
⑤執拗な架電・文章等による連絡を行うこと
⑥緊急ではないにもかかわらず休日や深夜に呼び出しを行うこと
の6つをあげています。なお、管理組合の役員も管理組合の組合員であるため、当然に本条の「組合員等」に含まれることに留意することとされています。
組合員が安心して相談できる環境を整えるために管理組合に相談窓口を設置して、信頼性と中立性を保つことのできる人が担当する方法が考えられます。改訂されたマンション標準管理委託契約書にカスタマーハラスメントの条項が新たに設置されたことを組合員に周知することも必要です。それにより組合員が疑問を感じている場合、相談窓口が解決に向けて真摯に向き合って取り組むことで組合員の安心を確保することが出来ます。
組合員は、管理委託契約により仕事ができるという意識ではなく、マンションを今以上に良くしようという思いで維持管理をしてくれているという相手へ感謝の気持ちを持って接することが大切です。