築25年、10階建て、総戸数58戸のマンションから「管理委託費が適正価格か?知りたいので、精査してほしい」という依頼が参りました。
早速、理事長と面談して現状をお聞きしました。新築当初から25年間同じ管理会社に全部委託している、役員は6名、任期1年の輪番制等であることが分かりました。
管理組合様と管理費削減提案業務契約を締結するため、総会に上程してもらい承認をいただき、業務がスタートしました。
契約内容は、期間10カ月、費用は基本料金33,000円プラス削減額1年分、削減については、現状のレベルを下げないことを条件に管理委託契約書の一部変更と管理会社とも交渉して、提案した削減額を確定させることが含まれました。
集会室にあった書類から3年間の総会・1年間の理事会資料を確認して現状を把握した上で、管理会社から各種点検報告書を取り寄せました。
管理委託契約書の仕様書と比較後6カ月かけて各作業に立会い、作業責任者からヒアリングを行った上で、法的に不要な作業項目、作業方法や設定作業時間の精査と望ましい費用案を管理会社の担当者に離席してもらい、理事会に提示しました。この要求を管理会社に申し入れ、管理会社が拒否した場合の対応も議論しました。
「他の管理会社の見積もり金額も知りたい」という要望と金額を知りたいという管理会社名も出ましたが、リプレイスは最終手段とアドバイスして、とりあえず現管理会社の対応をみることを基本方針としました。
その後、管理会社に削減額とその理由や他の事例を提示しました。それから2カ月後に回答が参りました。
その結果は、
日常清掃費+6,000円/月、
定期設備点検△5,500円/月、
エレベーター保守点検△10,000円/月、
消防設備等保守点検△9,900円/月、
貯水槽清掃△2,000円/月、
機械式駐車場点検費△5,800円/月、
管理手数料△3,100円/月
で合計金額△30,300円/月(年間△363,600円)の減額にスポット契約をプラス、
排水管清掃△29,000円/年、
建築設備定期検査△6,000円/年、
特定建築物定期検査△7,000円/3年(年間△2,333円)、
連結送水管耐圧試験△3,852円/3年(年間△1,284円)となり、
年間削減合計金額は△402,217円(税抜き)となりました。
また、管理委託契約書の文言を変更して、管理組合が管理会社以外の業者に直接発注した結果、区分所有者との間にトラブルが発生した場合でも管理会社が仲裁・業者への指導・理事会に文章で報告を行うことの規定を追加した管理委託契約書を次年度から締結することも行いました。
理事会もこの提示された金額と管理委託契約書を了承して頂きましたので、他社の見積もりは取らず、削減交渉は終了いたしました。
現在、東京都では、最低賃金が1,013円になり、2000年度の703円と比較すると1時間当たり310円の値上がりとなっています。これに働き方改革による有給休暇の取得も含めて、管理会社の協力会社からの値上げの要求が多くなって来ています。
また、築年数の多いマンションの損害保険料も大幅に値上がりしており、管理費が徴収金額だけで賄えきれず、駐車場等の収入で補っているところも多くなって来ています。
管理会社に対して、根拠のない値下げ交渉を行っても質の低下を招く恐れが考えられますので、管理のレベルを下げず、点検の現場を確認して方法等の提案も含めて、費用の精査をすることが大切だと思います。