平成30年(2018年)のマンション総合調査では、管理事務を管理組合が全て行っている自主管理のところは、6.8%(単棟型5.0%、団地型15.6%)と少ないのですが、長い間仕事をしていると業務の依頼や調査で接する機会があります。
私が今まで関わった自主管理の管理組合は、
①管理規約が無かったところ。
②正式に管理組合が組織されていなかったところ。
③長年一人の人に運営を任せ、決算報告の総会も開催されていなく、ある時工事費が足りないことが分かり、精査したら使い込みが発覚したところ。
④外部オーナーに決算報告がされていないことから管理費等の支払いが長年されず、滞納額が7桁になってしまったところ。
⑤組合員名簿はありましたが、孤独死が発生、相続人を探し出すのに苦労したところ。
⑥大規模修繕工事は、外壁塗装と防水工事のみ行われているところが多い中、給排水管更新や給水方式の変更も実施済みのところ。
⑦専有面積の割合で管理費等が徴収されず、均一の金額で長年徴収が行われていて、今さらガイドラインに基づく方法に変更出来ないところ、
⑧耐震診断が必要なのに実施できないところが多い中、建替え計画やスケルトン改修を建築士を中心に立案し、資金計画もリバースモーゲージ案まで提案して合意できているところといろいろありました。
自主管理の管理組合の印象は、築年数が経過しているところが多く、旧耐震建物で設備が少なく、専門的知識が必要な分野を担当できる人がいる、総会の出席率が高く、管理運営に関心が高く、長年積み上げた方法で運営がされているところが多いということです。
管理会社に委託せず、自分たちの労力で運営しているため、管理費用は安く、管理費と修繕積立金の分別管理はされていなくて決算は一つ、管理費用も例年同じような金額が並び、徴収額の約3割で運営されているところが多くありました。
長期修繕計画書がない・期間が短い・資金計画がないところもありますが、時期になると見積りを取得して、大規模修繕工事が実施され、資金が足りない場合は、一時徴収によって実施されています。
東京都の条例で示されている項目を全てクリアされていませんが、独特の方法で建物の維持管理、管理組合の運営がなされているところが多く、周りの建物に害を及ぼす環境問題になる可能性は少ないと感じています。
現在の区分所有者なら問題が起きませんが、専門的なスキルのある中心人物が欠けた場合や相続や転売が発生して新たな区分所有者が加わった場合、管理規約が更新されていないことや専有面積の割合で管理費等が徴収されていないことは、将来問題になる可能性がある要素だと思い、それとなくお話しても「今は考えることができない」という回答を聞くことが多いのが現状です。