長期修繕計画に基づいて修繕積立金が徴収されています。管理計画認定制度の17項目の認定基準の内、長期修繕計画に関しては、作成と資金計画の次の6項目が含まれています。
① 長期修繕計画の作成や見直しが7年以内に総会承認されていること
② 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、
これに基づき算定された修繕積立金額が総会承認されていること
③ 実効性を確保するために計画期間が30年以上で、
かつ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること
④ 長期修繕計画において将来の一時金の徴収予定がないこと
⑤ 長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金総額から算出された
修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
⑥ 長期修繕計画の最終年において借入金の残額がないこと
⑤の修繕積立金の平均額が著しく低額でないこととは、延床面積5,000m2未満は235円、延床面積5,000m2~10,000m2未満は170円、延床面積10,000m2~20,000m2未満は200円、延床面積20,000m2以上は190円、20階以上は240円の徴収金額を上回ることが必要です。
修繕積立金の積立方式として、国土交通省が勧めている「均等積立方式」と新築のマンションで多く設定されている「段階増額方式」があります。令和5年のマンション総合調査で現在の積立方式を尋ねたところ、均等積立方式が40.5%、段階増額方式が47.1%でした。
所有しているマンションを終の棲家として考えている人は、均等積立方式を選択することが多く、外部オーナーやいずれ手放すと考えている人は、段階増額方式を選択することが多いと総会での議論を拝見して感じています。
ある新築マンション(延床面積5,000m2未満で最低額は235円)での修繕積立金徴収の一例として、
1年目40円/m2・月、
5年目200円/m2・月、
9年目360円/m2・月、
13年目440円/m2・月、
23年目560円/m2・月
と増額の計画がされていて、30年間の平均徴収額は375.61円/m2・月になることから、著しく低額ではないという点をクリアしていました。購入してから5年目から値上げ幅が大きく、23年目で560円/m2となり、30年以降もさらに徴収額が上がることが予測できます。
しかし、今年2月に国土交通省が新築のマンションにおいて、当初の徴収額からの増額幅の上限を1.8倍とする方針を出しました。これはマンション購入時を低額に抑え、後から大幅に増額する計画で売りやすくしている販売優先の考え方を阻止する狙いがあります。
これを先ほどの新築マンションの修繕積立金徴収例に当てはめると
1年目250円/m2・月、
5年目300円/m2・月、
9年目370円/m2・月、
13年目400円/m2・月、
23年目450円/m2・月
とする計画に変わります。30年間の平均徴収額は376円/m2・月となり、当初の徴収金額も40円から250円にアップ、最終額は560円から450円にダウン、そして増額幅の上限も250円→450円と1.8倍となり、方針をクリアする計画となます。方針がない時と比べて段階増額方式の計画を確実に実施するための合意形成がスムーズに行えるようになったと思います。