東京の江東5区では、水害時ほとんどのエリアが水没して、水深は5m~10mに達するエリアがあると各区のハザードマップに記載されています。マンションで言えば、1階〜4階までが水に浸かってしまうということです。
また、水が引くまでに長いところで2週間以上かかるとも言われているため、「区内に留まるのは危険です。」とアナウンスをして、標高が高い地域や浸水のおそれがない地域へ避難(広域避難)を呼びかけています。
留まった人が多い場合、国の試算では救助できる人数は、1日2万人とされ、救助までに多くの時間を要します。
ただし、250万人(江東5区の人口の90%以上)が一斉に移動すれば、大混雑・大渋滞が発生することも予測されています。
河川の水位が高くなり、氾濫のおそれが出てきた場合、江東5区で共同検討を始めます。その結果、48時間前に「自主的広域避難情報」が呼びかけられ、24時間前に「広域避難勧告」、9時間前に「域内垂直避難指示(緊急)」の情報が発表されます。
管理組合の具体的な対応としては、役員就任時に「避難する」「残留する」という意思表示を毎年してもらい、マンションに残留する者には、期間限定でマンション標準管理規約第21条第6項のような権限を与えることも事前に決めておくことが必要です。
少しでも安心して広域避難をしてもらうために、1階〜4階に居住している人の荷物についても5階以上の廊下にあらかじめ移動できるように場所を決めておくことが必要です。
多くのマンションで1階にある看板や自転車等は5階に移動させ、居住者の荷物について、例えば101号室は601号室前、102号室は602号室前と具体的に場所を決めておくことです。
昨今の共用廊下は、1.2mはありますので、半分の建物側から60㎝の奥行と幅、高さを合意しておき、コンパネ等の板に移動する住居の部屋番号を書き、ブルーシートと共に管理組合で予算化して、購入することをお勧めします。
共用廊下を一時的でも個人が使用することは、規約や細則で禁止されていますので、管理組合が主導して期限付きで使用できるように準備しておきましょう。
水害対応について、マンションが一丸となって対応しているという協力体制は、「安心して住めるマンション」ということが伝わり、資産の向上に繋がります。
マンション内で荷物を移動させる時期は、遅くても48時間前の「自主的広域避難情報」が発表されたと同時に行い、完了した住戸から避難する人は順次避難を開始します。
5階以上の組合員は、集会室にある書類(事前に透明の衣装ケースを準備しておく)や備品、看板や自転車の移動に協力することも決めておきましょう。
また、電気室が1階に設置されているマンションが多いので、水深を決め、それに対応した止水板が設置できるように改修することも検討しましょう。
震災と異なり、水害は水没までに時間があるので、事前準備がしっかりできていれば、混乱を回避できるはずで、事前準備と訓練を繰り返し実施することが大切です。