多くの分譲マンションで管理組合の役員は、組合員が順番に交代で務める「輪番制」が採用され、総会で承認されています。
特に現役世代の方々にとって、マンションは「平日の夜と休日に身体を休める場所」であることが多く、日頃から共用部の維持管理や管理組合の運営にまで意識を向けている人は決して多くありません。そんな中、ある日突然「次はあなたの番です」と役員の白羽の矢が立ったらどうでしょうか。「なぜ、よりによってこの忙しい時期に」「もう少し先延ばしにできないか」と、後ろ向きな気持ちになってしまうのは当然の心理と言えます。その負担感や役務からの逃避は、誰しもが共感できるものです。
しかし、もし順番が回ってきたならば、ここは一つ「会社の重要なプロジェクト」に臨むような姿勢で、前向きに引き受けてみてはいかがでしょうか。
マンションという一つの建物に暮らしていても、居住階や家族構成、年代、職業とこれまでのバックグラウンドは人それぞれです。普段の生活では交わることの少ない多様な人々が、ある名簿の順番によって集まり、一定期間、定期的に集会室へと足を運ぶ。そこで、マンション内で日々発生するさまざまな問題に対し、管理規約を読み解き、管理会社の担当者からプロとしてのアドバイスを受けながら、合意形成を図り、解決策を実行していく、この一連のプロセスがきわめて高度な組織運営の経験となるはずです。
バックグラウンドが異なるからこそ、最初は意見の対立が起こることもあるかもしれません。しかし、同じ目標に向かって知恵を絞り、汗を流す中で、役員間には不思議な「一体感」が芽生え始めます。それは、学生時代の同級生や会社の過酷なプロジェクトを共に駆け抜けたチームメイトのような関係性です。任期が終わった後も、しばらく会わなくてもすぐに意思疎通ができるような、特別な絆が形作られていくのです。
役員の任期を終えた後、マンション内での景色は一変します。廊下やエレベーターで顔を合わせれば自然と笑顔で挨拶を交わし、立ち話でマンション内の情報交換をしたり、日々の生活のちょっとした疑問を相談し合ったりできる関係がそこにあります。
これこそが、役員に就任した人だけが受け取れる「ご褒美」です。
役員の順番を「厄介な義務」としてやり過ごすか、「新たなつながりを得る機会」として向き合うかで、その後のマンションライフの豊かさは大きく変わります。今までは見えていなかった管理組合運営の課題に気づき、主体的に関わることで、問題が解決したときの達成感は大きな喜びに変わるはずです。ぜひ、構えすぎず、新しい出会いを求めて、楽しむ気持ちで役員を引き受けてみてください。